=安倍元総理銃撃事件の報道に垣間見える「言葉の自動機械」=
こんにちは。柳原幸太郎です。
週末の参議院議員選挙の投票日を控えた7月8日(金)午後、選挙遊説で応援演説中の安倍元総理が銃撃され死亡するというショッキングな事件が発生しました。安倍元総理という日本だけでなく世界の政界でも極めて重要な位置を占める政治家が、民主主義の根幹である選挙期間中に、しかも選挙演説中に殺害されるという、まさに信じがたい、起こってはならない事件が起きてしまいました。主義主張の違いがあろうとなかろうと、一人の人が意に反して命を奪われるということは決してあってはなりません。親族・関係者の心中を察するに、言葉もありません。
日本中がなんとも重い雰囲気につつまれる中、本日は参議院選挙の投票日を迎え、おそらく自民党が大勝するであろう選挙結果が出たあと、今回の事件の背景・経緯が明らかになってくるにつれ、様々な言論が展開されていくことになりますが、当方だけではないでしょう、多くの日本人が、なんとも言えないもやもや感、今後の日本の行く末に対するさらなる不透明感を覚えているのではないでしょうか。
事件の概要は未だ断片的にしかわかっておらず、なぜ一人の大切な日本人の命が白昼堂々衆目の中で銃殺されると言う事件が発生したのかは今後の調査発表を待つしかありませんが、そんな中で、マスメディアの報道を見ていて、ひとつ違和感を覚えたので、今日はそのことを書くことにします。
事件直後、与野党各党幹部からは、「暴力による言論の封殺は絶対に許されない、民主主義のが危機に扮しているので絶対に阻止せねばならない」という類の論調が一貫して出されています。最初は犯人の人物像、背景、もしかすると大規模なテロ集団が背景にいて、選挙当日を目指してさらなる大規模なテロが起こるのではないか、など不安が先走るでしょうからやむを得ないとしても、犯人関連の情報が出され始め、①安倍元総理の主義・主張に不満があるものではない②ある宗教団体(母親がひどい目にあっている)と安倍元総理が関係あると思い殺そうとした、という報道がされ始めた後も、オオム返しのように、民主主義の危機だ、と伝え続けるマスメディアの姿があります。これに当方は何か違和感を覚え、これの違和感は何だろうと思っていたとき、宮台真司氏がよくいう、「言葉の自動機械」を思い出しました。そう、今回の安倍元総理殺害というショッキングな事件を受け、多くの人が思考停止に陥り、「言葉の自動機械」になっているように見えます。選挙中に安倍元総理が銃撃された、民主主義に対する暴挙だ、あってはならない。表面的には、その通りなのですが(なぜか違和感。。。)
そんな中で、神保哲生氏・宮台真司氏のマル激7月9日版を見ました。
さすがvideonews.com、TVメディアでは伝えてくれない背景・社会情勢などを深堀りしてくれますが、改めて思ったのは、山上徹也容疑者の犯行動機と彼がなぜそこに至るのかという社会背景は、良く分析しなければならないということです。選挙応援演説中に元総理が銃撃される、という表面的な事象からは、「民主主義の危機だ」という主張がでてきてもおかしくはないのですが、どうも、動機・背景は、民主主義云々というものではなく、個人的な恨み、その恨みの原因に宗教団体が絡んでいる、その宗教団体と政治家の関係、それらを報じる・”報じない”マスメディア、という複雑な社会問題が絡んでいそうです。民主主義の問題というより、民主主義がよって立つ土台とも言える社会システムの問題のように見えます。上記マル激7月9日版での神保氏・宮台氏の対談で、個人的な被害を受けた人が権力に助けを求めても、利権集団と結びついている権力が庶民を助けずに見捨てると、庶民は恨みを抱き暴力に訴え出る傾向にある、これは後進国の特徴で、日本の政治社会情勢が未熟になり後進国に落ちている何よりの証拠なのでは、という話がされています。今回の安倍元総理銃撃事件に至るまでに、自殺ではなく他殺を選ぶ、他人を巻き添えに自殺を図る、という事件が後を絶たないことをみても、神保氏・宮台氏の指摘には、当方もうなづくしかありません。
本日夜から、参議院議員選挙の結果が出始め、今回の安倍元総理銃撃事件をきっかけに、様々な議論が展開されていきます。その中で、「民主主義の危機」というキーワードを出して政治家が何かを言うとしても、それを利用して自分の立場の改善を図るだけの損得マシン的言動は、よく見極めないといけません。現在の日本の問題は、民主主義が危機に瀕しているから、というよりその前の段階、民主主義が構築される土台である社会システム自体が劣化・壊れてきているのではないか。マル激のように、そんな社会問題の存在自体をしっかり指摘してくれるメディアに国民ももっと耳を傾けた方が良いと、改めて強く思うのでした。
最後に、話は変わりますが海の向こう、イギリスでのニュース。
ジョンソン英首相辞任へ、きょう声明発表 2022年7月7日 By Reuters Staff https://jp.reuters.com/article/johnson-to-resign-reports-idJPKBN2OI0JY
日本で民主主義の危機だ、というキーワードが踊っていた時に見たイギリスでのニュースです。別のニュースを見ていたら、今回のジョンソン首相辞任の背景にあるイギリス人の国民性として、「イギリス人は何が嫌いかというと、一番嫌いなのは嘘をつく人」というものもありました。自浄作用が健全に機能しており、なんとも見事な国民の声と国会議員の行動、これぞ民主主義、に見えます。
うらやましい、と思った日本人は、当方だけでしょうか?
それでは。