外発・内発
この記事では、バランスシート(BS)の構造をより広い視点で捉え直し、その本質を探っていきます。具体的には、以下の点を示しました:
・BSは、「資産の状態(借方)」と「資産の出所(貸方)」という二極構造で成り立っている
・貸方はさらに「外発(義務あり)」と「内発(義務なし)」に分類される
この二極構造を用いることで、BSが貨幣、思想、権力、テクノロジーなど、あらゆる分野を分析するための普遍的なツールとなることを示しました。
また、これを前の記事で取り上げた三つの視点(虚構、対象領域、関係)と結びつけて考察しました。最終的に、BSは単なる財務ツールを超えた世界の構造を読み解く分析ツール機能するのです。

→ 【全文を読む】
虚構とストック
バランスシートは、単なる資産・負債の静的な記録ではありません。
それは、「既に実現している価値(ストック)」と「社会的信認によって成立する虚構的価値」という二重構造です。
BSを「既に現実として存在するもの」と「将来存在すると信じられているもの」という観点で捉えることで、現代の金融システムの根底――虚構がいかにして協力、投資、想像力のエンジンとして機能しているか――が明らかになります。

→ 【全文を読む】
BS三層フレーム
BS三層フレームは、バランスシート的思考を用いて世界を解釈するための概念的フレームワークであり、以下の三つのステップで構成されます。
誰の何の構造か?――〈対象領域定義(Domain Definition)〉
その中身は?――〈構造分析(Structure Analysis)〉
そして誰と、どうつながっているのか?――〈関係マッピング(Relation Mapping)〉
このフレームワークを通じて共通の問いを投げかけることで、様々な現象の構造分析を可能にします。

→ 【全文を読む】
資産の生成 ―― ストックとフローのはじまり
資産はどのようにして「無」から生まれるのか?
BS三層フレームワークを用いることで、BS資産の生成過程が見えてきます。
単体内での生成と、複数主体間での生成――二つの生成プロセスを通じて、
ストック資産とフロー資産がどのように生成されるかを明らかにします。

→ 【全文を読む】
資産の構造 ―― ストックとフローのかたち
生成された資産は、その後どのような構造を持つのか?
この投稿では、資産が持つ独自の構造をBS内で体系化し、その構造を「ストック/フロー」「単体/相対」という二軸で分類しました。
これにより、8つの資産変動類型――4つのストック型と4つのフロー型――を特定しました。
さらに、これらの変動パターンをもとに、BS内の資産を以下の6つの類型(借方3類型/貸方3類型)に再分類しました。
このフレームワークは、従来の会計ツールとしてのBSの枠組みを超えて、資産の「生成と変容の構造」を捉え直す試みです。

→ 【全文を読む】
→ 【資産構造のビジュアルガイドを見る】

剰余の出現 ―― Part-1 剰余の生成
本稿では、「剰余はどこから生まれるのか?」という問いに正面から取り組みました。
先に整理した8つの資産変動類型を検討した結果、剰余を構造的に生み出す可能性があるのは、「単体フローサイクル」、すなわち消費フローと事業フローだけであることが明らかになりました。
この二つのフローの内部では、「純粋ストック資産(PSA)」「労働力(LBR)」「貨幣(MNY)」という三つの基本要素が、相互に依存しながら循環しています。消費フローでは、PSAがLBRへと変換され、事業フローでは、LBRと他の資産が投入されることでPSAやMNYが生成されます。消費フローは、事業フローによって生産されたPSAに依存し、事業フローは、消費フローによって生成されたLBRに依存しています。
こうした再生循環の中で、回収される価値・成果が投入を上回るとき、剰余が発生する――これこそが、剰余の構造的な答えです。
剰余とは、価値が自己の内部で循環し、再生的に回る「単体フローサイクル」――すなわち、消費フローと事業フローという双方向の連環構造――のなかでのみ、発生するのです。

→ 【全文を読む】
剰余の出現 — Part 2 剰余の源泉
前稿・『構造分析(3)Part 1:剰余の生成』では、剰余は単体フローサイクルの内部でのみ構造的に発生し得ることを確認しました。
今回の投稿では、その単体フローサイクルの内部構造をさらに深く掘り下げ、どのように剰余が発生するのか、そしてその源泉がどこにあるのかを明らかにしました。たとえ貨幣以外の資産であっても、剰余を認識するためには、最終的に貨幣単位で評価・測定される必要がある(=剰余は貨幣を求める)――という前提での分析です。
まず、単体フローサイクルは次の二つに分類されます。
- 一次完結型:外部と接触せずに、単体の内部で完結する構造
- 二次展開型:外部との接触(相対資産変動)を一時的に含む構造
このうち、剰余を生成する構造を持つのは一次完結型だけであり、そこでは以下の二つの剰余生成パターンが確認されました:
- 労働力剰余:PSAを投入し、消費フローによって労働力を回復する構造
- PSA剰余:労働力を投入し、事業フローを通じてPSAを回収または創出する構造
一方で、「貨幣」は一次完結型には登場せず、もっぱら二次展開型――交換・貸借フロー・投資フローといった相対資産変動――の中で流通します。しかし、これらの相対資産変動には剰余を生み出す構造的な力は存在せず、貨幣の源泉はさらにその外部に求めざるを得ません。
その結果、たどり着くのがただひとつの結論です:
あらゆる貨幣の流入は、最終的に「貨幣発行(Money Issuance)」に行き着く。
これは、剰余の源泉が本質的に次の三つに集約されることを意味します:
- 労働力剰余:PSAを投入し、消費フローで労働力を回復する
- PSA剰余:労働力を投入し、事業フローでPSAを回収・創出する
- 貨幣剰余:相対資産変動の外側にある「貨幣発行」
ただし、この「貨幣発行」という構造の内実――その過程で何が起きているのか、そこに本当に剰余があるのか――は、本稿ではまだ踏み込んでいません。
この問いこそが、今後の投稿で探求していく『貨幣の本質』の核心的なテーマとなります。

→ 【全文を読む】