BSから見える『お金のしくみ』
★Ⅰ.馬の骨でもわかる『BSのしくみ』
★Ⅱ.馬の骨でもわかる『お金のしくみ』
【3】貨幣発行の類型
1.貨幣の発行・供給・流通・回収プロセス <★★★今回はココ★★★>
★Ⅲ.BSから見える『財政破綻とは何か?』
★Ⅳ.BSから見える『成長とは何か?』
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Ⅱ.【3】1.貨幣の発行・供給・流通・回収プロセス
=『発行』と『供給』の違いを明確にする =
<本稿のイイタイコト>
❶ 世界中で貨幣発行と貨幣供給は混同され、明確な定義がない。 供給といっても、新規貨幣発行なのか、政府預金の再供給なのかが区別されていない。
❷ 貨幣の本質を明らかにするには、発行と供給の概念を厳密に整理し、その違いを明確にすることが不可欠である。
❸ 発行と供給の違いを明確にした上で、貨幣の発行・供給・流通・回収のプロセスを整理し、BSの基本構造を用いてそれぞれのしくみを明らかにする。
❹ 『発行』とは 「統合政府が貨幣を創出するプロセス」、『供給』とは 「貨幣が民間市場に流入するプロセス」 である。
❺ 『供給』には、統合政府が民間市場に貨幣を供給する『統合政府供給』と、民間市場内で『信用創造』により創出された貨幣が供給される『信用供給』の2種類がある。
❻ 統合政府供給は、新規発行貨幣を供給する『発行供給』と、回収され統合政府預金に保管された貨幣を再投入する『再供給』に分類される。
❼ 信用創造の源泉となる貨幣の流入ルートには、統合政府が供給した貨幣をもとに行われる『統合政府供給貨幣ルート』と、民間市場で流通している貨幣をもとに行われる『流通貨幣ルート』がある。
❽ 『流通』とは 「貨幣が民間市場内で循環するプロセス」 であり、この過程では貨幣量は増減しない。
❾ 『回収』とは 「統合政府が貨幣を民間市場から吸収するプロセス」 である。
➓ 回収された貨幣は、一旦 『統合政府預金』として保管され、その後『再供給』されるか『消却』される。
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新規発行か?回収再投入か?
みなさんは、貨幣の発行と供給はどう違うのか、明確に区別できているでしょうか?
例えば政府が公共事業に財政投入する場合、その原資は新規貨幣発行でしょうか? それとも回収された貨幣の再投入でしょうか?この違いは財政に大きな影響を与えるにもかかわらず、政府やメディアの発表ではほとんど区別されていません。
つい先日、自民・公明・維新3党で「高校授業料無償化」に合意しましたが、その財源はどのように確保するのでしょうか?
Chattyくんにネット検索してもらいましたが、政府の発表では、財源確保の方法は明示されていません。
Chattyくんの調査結果<高校授業料無償化の財源について>
https://chatgpt.com/share/67c94bc0-f428-800e-9a7e-040ae9b47ddd
日本に限らず、海外主要国も同様の状況で、『貨幣供給』というとき、それが『新規貨幣発行』なのか、『政府預金の再投入』なのか、あいまいになっているようです。
Chattyくんの見解<貨幣発行・供給の区別について> https://chatgpt.com/share/67c6925d-8034-800e-9380-f7fd6105f07e

『発行』と『供給』の再定義
現在の政府・メディアの発表では、「貨幣供給」という言葉が、新規貨幣発行と政府預金の再投入の両方を含む形で使われており、その区別が曖昧になっています。本論稿では、貨幣供給の定義を明確にし、『発行』と『供給』を厳密に区別した上で、BSの基本構造を用いて「発行・供給・流通・回収」のプロセスを整理します。

「貨幣の『発行』は統合政府内で起こること」、これが基本です。よって、「貨幣が統合政府から民間市場に移動することは、『発行』ではなく『供給』と称する」ことになります。
ここでは、貨幣が生まれ、流れ、戻る対象領域を『統合政府』と『民間市場』の二つに明確に区分します。海外の政府・民間はここでは全て民間市場に入るものとし、『自国の統合政府(通貨発行管理当局)』と『それ以外のすべて』で線引きします。
これをまず簡潔に下記イメージ図に表してみます。

更に、これをもう少し掘り下げます。具体的には、統合政府内と民間市場内に存在する複数の貨幣の源泉・循環ルートを追記します。

『発行供給』vs『再供給』
まず、『供給』です。統合政府から供給される貨幣の源泉は、新規貨幣発行と、回収され預金として保管されて貨幣の再投入、の二通りあるので、それを明確にします。そのことを示すために下図では、統合政府内で『貨幣発行』の横に『預金』を置き、発行から供給に入るルートと、預金から供給に入るルートの二つのルートを設けています。ここでは、新規貨幣発行による貨幣供給を『発行供給』、回収預金の再投入による貨幣供給を『再供給』、発行供給と再供給を合わせて『統合政府供給』と称することにします。

『統合政府供給』と『信用供給』の違い
また、供給には二つのルートがあります。一つは、統合政府供給によって民間市場に流入した貨幣がそのまま流通する場合。もう一つは、流入した貨幣が銀行預金として信用創造を通じ、新たな貨幣を生み出し、それが市場に供給・流通する場合です。
そのことを示すために下図では、民間市場内で貨幣流通の横に信用創造を設け、統合政府供給から流通に直結するルートと、供給から信用創造を経て流通に入るルートの二つのルートを設けています。ここでは、『信用創造』で創出された貨幣が民間市場に供給されることを、統合政府供給と区別する意味で、『信用供給』と称することにします。

『信用創造』の2つのルート
ところで『信用創造』とは、民間市場において市中銀行が貸出を行うことで新たな貨幣を創出するプロセスであり、その貸出の原資には、統合政府から供給された貨幣を元手に貸し出すルートと、市場内の既存流通貨幣を元手に貸し出すルートの2通りあります。下図では、信用創造に入るルートが、統合政府の貨幣供給から入るルート(『統合政府供給貨幣ルート』)と、貨幣流通から入るルート(『流通貨幣ルート』)の2つのルートがあることが確認できます。

『回収』された貨幣の行方:『再供給』か『消却』か
最後に回収についてです。回収された貨幣は一旦預金(統合政府預金)に入りますが、民間市場に再投入される場合と、貨幣が消却される場合の2通りあります。そのことを示すために下図では、統合政府内で貨幣発行の横に預金と貨幣消却を置き、回収から預金を経て、再供給されるルート(『回収貨幣の再供給』)と、消却されるルート(『回収貨幣の消却』)の2つのルートを設けています。

貨幣の流れ・4つのプロセス全体像
以上、発行・供給・流通・回収プロセスの概略を説明しました。以下にその全体像をまとめておきます。

発行・供給・流通・回収の仮説
本論稿では、BSの基本構造を通して貨幣の本質を考察するため、一般的な貨幣認識とは異なる前提を仮説として設定しています。以下に、その仮説をリストとして整理しました。
今後、各プロセスにおける資産増減の類型を分析する際、一般的な貨幣認識とは異なる点が生じることがあります。その場合、本リストを参照することで、その違いがどの仮説によるものかを確認するための指標として活用できます。

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今回は以上です。ここで論じた仮説の前提を踏まえ、各プロセスではどのような資産増減が展開されているのか、BSの基本構造を適用しながらその類型化を思考実験していきます。次回はまず、『貨幣発行の類型』を見てみます。
それでは。
