BSから見える『お金のしくみ』
★Ⅰ.馬の骨でもわかる『BSのしくみ』
【3】資産増減の類型 <★★★今回はココ★★★>
★Ⅱ.馬の骨でもわかる『お金のしくみ』
★Ⅲ.BSから見える『財政破綻とは何か?』
★Ⅳ.BSから見える『成長とは何か?』
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Ⅰ.【3】資産増減のパターンを類型化する
「Ⅰ.馬の骨でもわかる『BS』のしくみ」では、まず財務諸表の代表である「BS」と「PL」の関係を「【1】ストックとフロー」(*1)で見たあと、BSを取り巻く相対関係が重層構造に絡み合っていることを「【2】相対関係の入れ子構造」(*1)で見てきました。
今回【3】からは、資産増減の類型を見ていきます。貨幣経済における経済活動の結果、経済活動の当事者の資産は様々に増減します。その増減の理由と増減の仕方を類型化して眺めてみることで、資産自体の本質が浮かび上がってくると考えます。
まず、資産増減を類型化する大きな切り口として、次の二つを指摘したいと思います。
❶ ある時点のストック移動か、フロー投入一定期間後のストック移動か
❷ 1当事者の資産内での移動か、複数当事者間の相対関係における移動か
順を追って説明します。
❶-(1)ある時点のストック移動
「Ⅰ.【1】1.ストックとフローの関係」(*1)で見たように、BSは、ある時点での資産の状態を表します。
例えば、八百屋に行き、持っていた200円でニンジン3本を買ったとすると、買った瞬間に、持っていた200円の資産は、ニンジン3本に変動(移動)する、ということです。
またこれを言い替えると、私(A社)と八百屋(B社)の相対関係でみると、私の200円が八百屋に、八百屋の人参3本が私に、瞬時に移動する、ということです。ある時点で発生すると同時に完了します。
❶-(2)フロー投入一定期間後のストック移動
一方、瞬時に発生・完了するストック(資産)移動の他に、資産をフロー投入し一定期間後に資産を回収する場合があります。例えば、買った人参3本を食べると(消費=フロー投入)、一定時間をかけて、胃で消化され、腸で吸収され、排せつ物を廃棄することで、一定期間の後に、体力・生命力を回復(回収)します。
整理すると、ある時点でストックが瞬時に変動/移動(入れ替わる等)するケースと、資産のフロー投入後一定期間の後に資産回収をするケースがあります。これを、「ストック/時点」をワンセット、及び、「フロー/期間」をワンセットと捉えて類型化することができます。
「Ⅰ.【1】1.ストックとフローの関係」(*1)で見たように、元々ストックは「ある時点での資産状態」、フローは「ある一定期間の資産循環」を表しています。「時点」「期間」はそれぞれ「ストック」「フロー」に既に含まれている切り口であると捉えて、今後は「ストック/時点」は単に「ストック」、「フロー/期間」は単に「フロー」と記載していくことにします。但し、ストックには常に「ある時点」での資産状態、フローには常に「一定期間」の資産循環である、との意味を含んでいることは大事な切り口ですので、改めて強調しておきます。
❷-(1)1当事者の単体内移動
次に、もう一つの切り口である、「1当事者の単体内での移動か、複数当事者間の相対関係における移動か」を見てみます。まず、1当事者の単体内移動について。
Cさんは、自分の家の前の池にたまった雨水を飲んで暮らしているとします。ある時、日照りが続き、池の水が蒸発して、減少してしまいました。池の水をCさんの資産とすると、水は誰かに贈与したわけでも、誰かに強奪されたわけでもなく、ただ単に自然に減少しています。これを、「自己減少」、すなわち、他者の資産との相対関係において資産の交換等の移動が行われたわけではなく、Cさん『単体』の資産内で、自ら減少したもととして捉えます(*2)。
その後、しばらくすると天の恵み、大雨が降り、Cさんの家の前の池は増水しました。これも同様に、誰かからもらったわけでも、奪ってきたわけでもなく、自然に増加しています。これを「自己増殖」、すなわち、他者の資産との相対関係において資産の交換等の移動が行われたわけではなく、Cさん『単体』の資産内で、自ら増加したもとして捉えます。(*2)
❷-(2)複数当事者間の相対関係移動
以上が「1当事者(Cさん)の単体内の資産移動」でしたが、次に「複数当事者間の相対関係移動」を見てみます。
Cさんは、自分の所有している土地に金山があり、金塊がざくざく掘れます。ただ、Cさんの池は川が流れてこず雨水をためているだけなので、日照りが続くとすぐに水が足りなくなります。
一方、Cさんの隣にDさんが住んでいます。Dさんの池には川が流れてきて、日照りが続いても、水は豊富に確保できますが、金山はありません。Dさんは金塊をとても欲しいと思っています。
このようなCさん、Dさんのそれぞれの状況から、相対関係ができあがります。すなわち、Cさんは自分の金塊と交換に水が欲しい。Dさんは、自分の水と交換に金塊が欲しい、という関係です。
そこで、CさんとDさんは、水と金塊を交換することにしました。
この交換は、双方が合意すると同時に即時に実行・完了します。双方の資産が入れ替わります。
以上、「1当事者の単体内での移動か、複数当事者間の相対関係における移動か」を整理すると、キーワードで言うと、「単体」か、「相対」か、で類型化することができます。
★単体
★相対
資産増減は<ストック/フロー X 単体/相対>で類型化
結論として、資産の増減は、<ストック/フロー> X <単体/相対> の組み合わせで類型化ができると考えます。次回はこれをもう少し詳しく掘り下げてみます。
それでは。
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(補足)
*1 未だ未投稿です。
*2 対象領域を人(現代社会の法人を含む)だけにするか、自然(例えば、地球・日本の国土等)を資産保有の当事者として含めるかで、相対関係は変わってきます。
1 thought on “(ストック/フロー)x(単体/相対) で見る資産増減”
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