=問題を複雑にする『反シオニズム』と『反ユダヤ主義』の絡み合い=
こんにちは。柳原孝太郎です。
イスラエル・ハマス戦争が発生後一か月半をすぎ、双方の人質交換のための4日間の休戦を迎えましたが、休戦後の行方を見極めることがますます困難な状況になっているように見えます。
当方と当方が住んでいる日本、日本を含む西側諸国など世界各国は、10月7日のハマスのイスラエル急襲が発生するまで、パレスチナ事情などはほとんどニュースにもならずに認識していなかったというのが正直なところではないでしょうか。そんな中での今回のあまりに急激、過激な動きには、当方は正直唖然とするしかなく、改めてなぜこのようなことになってしまったのか、との大きな疑問が湧いてきます。
そこで今回、ChatGPTを使い過去のイスラエル・パレスチナ紛争の経緯を抽出・整理して改めて見てみることにしました。中東の歴史の専門家でもなんでもない馬の骨の当方はパレスチナの歴史を整理して俯瞰してみたことなどありませんでしたが、複雑と言われる中東情勢を改めて認識し直す良い機会になりました。(ついでに、ChatGPTの威力を改めて見直す良い機会にもなりました。。。)
今回、過去からの経緯を俯瞰してみた結果をひとことでいうと、パレスチナ人がいかに酷い状況に置かれてきたかが再確認できた、ということになります。また、複雑と言われていることについても、しっかりと俯瞰してみると、パレスチナ問題に『仮面』をかぶせて複雑にしているものが何なのかを垣間見ることができました。
(53)目次 ・イスラエル・ハマス戦争が世界に呼び起こすパレスチナの現実 ・イスラエル建国前は共存していたユダヤ教徒・イスラム教徒 ・反ユダヤ主義の根 ・反ユダヤ主義の過激化とその反省、そしてシオニズムの本格化 ・そこで初めて登場する、反シオニズム ・イスラエル・欧米諸国がパレスチナ問題にかぶせる『仮面』 ・『二項対立を脱色』させて新たな関係を創造する
イスラエル・ハマス戦争が世界に呼び起こすパレスチナの現実
今回当方が一番知りたかったことは、イスラエル建国以前・以後のユダヤ人・ユダヤ教とアラブ人・パレスチナ人・イスラム教の関係です。今回調べてみるまでの当方の素人知識においては、第二次世界大戦中のナチスドイツのユダヤ人に対するホロコーストの悪夢を世界が反省した結果としてイスラエル国家が誕生したことは知っていますが、イスラエル誕生以前のユダヤ人虐殺・反ユダヤ主義(Anti-Semitism)に関わるものとしては、イスラム教・パレスチナ人・アラブ人の姿が見えてきません。この点の事実関係を確認したかったものです。
今回、パレスチナの歴史を簡単に整理するため、ChatGPTを使ってネットの情報を抽出して整理してみることにしました。
以下のURLがChatGPTとの会話を記録したデータになります。話が行ったり来たりしていますが、そのまま添付しています。
https://chat.openai.com/share/36a383b7-0d01-4fe9-a1ae-24d77b8be65e (注:ChatGPTは、正確でないデータが含まれることがあるとしていますので、その前提で読んでください)
これを整理してみたのが以下の図です。
この図を俯瞰しながら、今回ChatGPTを使って歴史的事実を抽出して確認できたことを整理してみます。
イスラエル建国前は共存していたユダヤ教徒・イスラム教徒
イスラエル建国前のパレスチナ地域では、オスマン帝国のスルタンが世俗的統治者であると同時に、イスラム教の指導者としても支配していましたが、比較的自由な宗教活動が保障されており、帝国内でのユダヤ人の地位は一般に寛容であり、税金さえ払えば、彼らは経済的、文化的な活動を行うことができたとされています。
つまり、イスラエル建国・シオニズム運動の前までは、現在のパレスチナにおけるユダヤ教徒とイスラム教徒の争いの基となる根は確認できません。
反ユダヤ主義の根
のちにナチスドイツのホロコーストに繋がる反ユダヤ主義は、根っこを辿ると、キリスト教とユダヤ教の争いに遡ることができます。
キリスト教は、ユダヤ教徒であったイエス・キリストが創始しましたが、ユダヤ教はイエスを救世主としては認めませんでした。
また、中世まではキリスト教がその教義として利息の受け取りを禁止していたため、キリスト教徒は金融業を行うことができず、結果としてユダヤ教徒が金融業に従事することで経済力をつけていったため、経済的格差をつけられたキリスト教徒がユダヤ教徒を恨む、ということも大きな原因のひとつと言われているようです。
反ユダヤ主義の過激化とその反省、そしてシオニズムの本格化
キリスト教誕生以降、程度の違い・表現方法の違いはあれずっと存在してきた反ユダヤ主義は、ナチスドイツによって過激化し、結果としてホロコーストという人類史上最悪のジェノサイドが発生します。ナチス活動開始以前、1897年にスイスのバーゼルで開催された第一回シオニスト会議によって活動が開始されたシオニズム運動は、ホロコースト発生にまで至ってしまった反ユダヤ主義を反省するキリスト教社会の後押しもあり、1948年にイスラエル建国という形で実現します(※)。
※イスラエル建国に至る過程で悪名高き『イギリスの三枚舌』が発生しますが、ここでは詳細の深堀はしません。ChatGPTの出力を参考に供します。 ・フセイン・マクマホン協定(1915-1916年) ・サイクス・ピコ協定(1916年) ・バルフォア宣言(1917年) https://chat.openai.com/share/d8909c37-e919-42d6-a3e9-14c33f249e4c
このように見てみると、シオニズム・イスラエル建国は、キリスト教徒の反ユダヤ主義・ホロコーストの延長線上にあることが見て取れます。
そこで初めて登場する反シオニズム
かような経緯で建国されたイスラエルに対し、元々1000年以上パレスチナに居住を続けていたイスラム教徒のパレスチナ人が抵抗を始めるのが、反シオニズム運動です。
上記で見てきた図を、反ユダヤ主義、ホロコースト、シオニズム、反シオニズムの流れだけに絞った図が以下になります。
結局、キリスト教とユダヤ教の対立が、オスマン帝国のスルタン=カリフの支配下でパレスチナ人とユダヤ人が安定的に共存していたパレスチナの地を、終結の糸口が見えない戦争とテロの地へと追いやったことが見て取れます。
これをもう少し簡略化すると以下の通りです。
つまり、反シオニズムを叫ぶパレスチナ人は元々パレスチナの地でオスマン帝国のイスラム教国家体制のもと、信教の自由を認められていたユダヤ人と共存していたにすぎません。
このパレスチナの地を世界で最も戦争とテロが集中した地にしてしまった原因は、キリスト教徒のユダヤ人差別が発端であり、その後ナチスドイツによるホロコーストが発生し、ユダヤ人が自らの自己防衛を主張してシオニズムを実行に移したことにあると見えます。パレスチナ人はパレスチナ地域の現状変更について、自ら積極的に行動を起こしたことは何もないようにしか見えません。
イスラエル・欧米諸国がパレスチナ問題にかぶせる『仮面』
欧米諸国は、ユダヤ人のシオニズムに対しては、キリスト教社会が引き起こしたユダヤ人差別・ホロコーストへの反省から、無批判に支援する傾向にあることが窺えます。その結果、自ら1000年以上居住していた土地から追い出されることに抵抗しているに過ぎないパレスチナ人の反シオニズムに対して、イスラエルに抵抗することをもって『反ユダヤ主義だ』との仮面をかぶせて攻撃する、イスラエル及び欧米諸国の行動が浮かび上がります。
しかし今回図式して見てわかる通り、イスラエルを無批判で支援するために、反シオニズムに反ユダヤ主義のレッテルを貼るのは、過去からの経緯を見る限り、理不尽極まりないものと見えます。
パレスチナ問題を複雑にしているのは、そもそも別のもとと捉えるべき『反ユダヤ主義』と『反シオニズム』が絡み合い、時に自らの集団の利益を得るために混同させ、同一化させる行動が起きているからに見えます。SNSが威力を発揮してそれぞれの集団のプロパガンダ的な情報が錯そうしています。
結局それらの根底にあるのは、ホロコーストの反省から水面下に沈んでいる反ユダヤ主義的な思想と、その水面下に沈んでいる反ユダヤ主義的な思想を二度と表面化させまいとする強い意識で、その強い意識のために、本質的に別ものである反シオニズムに反ユダヤ主義の仮面をかぶせる傾向が見てとれます。
上記の仮面1・2については、イスラエルとイスラエル支持の欧米諸国が、イスラエルの主張の正当化のために、パレスチナの反シオニズムは元々単に1000年前から続いているパレスチナ地域における自らの居住権と人権を主張するものに過ぎないのに、その主張にイスラエル建国以前にはパレスチナとは関係のなかった反ユダヤ主義の仮面をかぶせようとするものに見えます。
上記の仮面3は、逆にパレスチナ人は、イスラエル建国以前は反ユダヤ主義的な思想は無かったにも関わらず、イスラエル建国以降のイスラエル・欧米諸国の対応に対する怒り、恨みが増幅して、反ユダヤ主義的な思想を帯びてくる、結果としてテロ行為にも発展している、という背景があることが見て取れます。
もうひとつ表面化しているのは、反ユダヤ主義の再浮上です。今回の一連の経緯から、イスラエルがガザに対して病院・学校・女性・子供含めて一切躊躇なく爆撃・攻撃して殺戮している様をジェノサイドだという国際世論も大きく巻き上がっている中で、欧米の反ユダヤ主義・ホロコーストの反省から水面下に沈んでいた(ただ、依然としてくすぶっている)反ユダヤ主義的思想を確信的に持つ人々が、パレスチナ問題にまったく関係のないところで反ユダヤ主義的な行動を起こす事態が急増していることも見てとれます。
AFPBB News 2023年11月14日 21:18 仏で反ユダヤ主義的事案1500件超 ガザ衝突以降 https://www.afpbb.com/articles/-/3491308?cx_part=search
『二項対立を脱色』させて新たな関係を創造する
過去、何度かあったパレスチナでの和平交渉は結局都度決裂し、現在は紛争終結の糸口すら見えない状況と思えます。過去の交渉決裂にいたる経緯を俯瞰してみると、双方陣営の二国共存派・和平推進派が、自国の強硬派に暗殺される、という事態が暗い影を落としているように見えます(※)。
※ イスラエルのラビン首相の暗殺・PLOのサルタウィ博士の暗殺については、ChatGPTの以下出力を参考に供します。 https://chat.openai.com/share/b7f7f22c-5030-4dd5-bc38-97e6d3a9a905
結局、二国並立させるか、一国で独立するか(敵側を武力で排除)、という二項対立がまったく解決不能な状態になっているように見えます。オスマン帝国時代のように、ユダヤ人とイスラム教徒のパレスチナ人が共存するには、現状ではお互いに他方の国を認めて二国並立・並存するしか平和の道はないと見えます。過去70年、結局それが実現しないのは、少数派であっても決して無くならない、過激派の存在、その過激派が引き起こすテロが、お互いの怒り、恨みを増幅させ、和平を求める人の行く末を閉ざし、相互憎悪の深いスパイラルにはまっていくしかない構図に見えます。
そんな折、まったく本件とは関係のない文脈で、たまたま郡司ペギオ幸夫著・『創造性はどこからやってくるか』を読んでいたときに、ひょんなことから、ペギオ氏の主張がパレスチナ問題のヒントになるのでは、と思ったので、最後に触れておきます。
創造性はどこからやってくるか ─天然表現の世界 筑摩書房/郡司ペギオ幸夫 著 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075758/
書籍の詳細説明は他の機会に譲りますが、今回のパレスチナ問題で見てきた、イスラエル・パレスチナの二国対立、またそれぞれの国内での二国家解決派(穏健派)と一国家解決派(強硬派)の対立を、二項対立とういう仕組みで見た時に、ペギオ氏の言うところの『二項対立』を使った『創造』によって、新たなパレスチナ地域の在り方、パレスチナ・イスラエルの関係を『創造』することはできないものか、と思うものです。
ペギオ氏が言いたいことは、AとBの二項対立では、AとBの両立が難しいという肯定的矛盾から、AとBを『脱色』させて両方とも存在しないという否定的矛盾に達し、そこから二項対立の『外部』に接続して新たな『創造』を召喚する、という流れと理解しました。何を言っているのかまるで分らないと思いますが、興味のある方はぜひこの書籍を読んでみてください。
パレスチナ問題のヒントになるのでは、と当方が思った部分は、この『脱色』という部分なのですが、正直、パレスチナ問題は双方に過激派が存在する限り、解決しようとした段階で過激派がテロを起こすことで、全てをご破算にできてしまいます。今までの関係の延長線では、このループは決して抜け出すことができないように見える中で、ペギオ氏の『脱色』に目が止まった次第です。イスラエル・パレスチナ双方とも、過去の歴史の延長戦上で考え行動をしていく限り、堂々巡りのループを抜け出すのは困難に見えるため、今までの枠組みの『外部』に接続して、新たな方向性を『創造』するしかないのではないか。そのためには、まず、過去の延長戦上での思考・行動を『脱色』することから始めないと、これまでの関係性のループからは決して抜けられないように感じます。脱色、つまり過去の経緯・意味を無意味にすることがいかに難しいかは想像できるのですが、逆に言うと、そのくらいしないと、現在のパレスチナ問題の抜け道は見いだせないのでは、そう思います。具体的にどうするのか?についてのアイデアがあるわけではありませんが。
創造の為の『二項対立の脱色』については、未だ当方の認識が浅いため、もう少し深く考えて見たいテーマですので、機会があればまた取り上げます。
それでは。