=準備を怠る行政が国民に晒す姿(17)=
こんにちは。柳原孝太郎です。
東京都内での新型コロナウイルスの感染者数は7月27日に過去最多を更新する2848人、昨日28日は3177人、今しがた速報が入った本日は3865人と、3日連続で過去最多を更新。
27日の過去最多更新の発表の後、東京都福祉保健局長は「年末年始の2千人台とは医療提供体制やワクチン接種などで状況が違い、死者が急増することはない」と強調し、「いたずらに不安を煽ることはしていただきたくない」とのコメントを出しました。それに対して都庁内外からは批判のコメントも出ています。
東京新聞 都局長「不安あおらないで」 コロナ過去最高、小池氏対応せず 2021年7月27日 22時19分 (共同通信) https://www.tokyo-np.co.jp/article/119813
Gooニュース/東スポWEB 東国原氏 都局長〝不安を煽らないで〟に「何言ってんの?」感染者2日連続過去最多 2021/07/28 21:08 https://news.goo.ne.jp/article/tokyosports/entertainment/tokyosports-3478057.html
この都局長コメントについては、当方は大きな認識のズレ、強い違和感を覚えずにはいられません。
ワクチン接種が進み高齢者の感染者数は顕著に落ちてはいるものの、ここまで急激に感染者が増加すると都内のコロナ病床はひっ迫します。欧米と違い民間医療機関に依存している日本は病床の確保も要請ベースでしかできません。結果としてしわ寄せの行く救急医療の現場が制限を受ける形で医療体制維持にリスクが出て来るのは明らかで、都民は当然ながら不安になります。
この状況で都局長が「不安を煽るな」と発言するに至る考え方が全く理解できません。
「不安を煽るな」というのは、言い換えると、「現在は不安を感じる状況が存在しないにも関わらずあたかも存在しているかのように言うな」ということになります。つまり、「大騒ぎするな」ということです。
これは、明らかに存在するリスクを、コロナ対応にあたる東京都自らがその存在から目を逸らせる意図的な印象操作を試みているようにしか見えません。さすがに都庁内でも批判が出ているようです。
朝日新聞デジタル 都局長の「不安をあおらないで」発言、都庁内からも批判 軽部理人、下司佳代子2021年7月29日 6時00分 https://www.asahi.com/articles/ASP7X62Q2P7XUTIL02C.html
都局長はなぜこのような発言をしたのでしょうか。そこに見て取れるのは、科学的な根拠に基づいた見通し・最悪の場合のシナリオとその準備が何もできていない局長が、起きては困ると自身が『不安』に思っていたことが見事に的中して発生した現実に直面し、動揺して全体を俯瞰して見ることができなくなった焦りの姿です。
やはり確率を重視して科学的な視点で事前にシナリオを想定して準備しておくことがいかに大切であるかを改めて認識させられましたが、そういうシナリオを準備しようとした気配はみじんも感じられません。
都局長がマスコミに「不安を煽るな」と言うのを聞いた都民、特に若い世代の人たちがどういう行動をするのかは少し考えればわかるはずです。都のしかるべき責任者が「大騒ぎするな」と言っているのを聞いたら、ただでさえ緊急事態宣言に対する免疫ができて緊張感が緩んでいる若い世代は益々大丈夫なんだと高を括って、オリンピックと夏休みの高揚感から益々街に繰り出してしまいます。
いくらワクチン接種が進んでいるからとは言えまだ国民の大多数が接種未完了の状況で過去に類を見ない程感染者数が急拡大している事態に直面したら、都が国民に一番言いたいことは、不要不急の外出は避けて人流抑制に協力して欲しい、ということではないでしょうか。都知事はそういう発信をしているはずですが、都庁内では都知事・局長は会話はしていないのでしょうか。
そんなこともわからない人が福祉保健局長として都のコロナ対応に当たっているという事実を知る我々都民・国民は、そんなことで大丈夫なのかと「不安を煽られる」と言う何とも皮肉な状況になっています。
オリンピック開始後一週間が経過しました。8月末の2回目のワクチン接種の予約日が早く来ないかと心待ちにしている当方は、家で静かに東京オリンピックをテレビ観戦しながら日本選手が大活躍する姿には感動を抑えられませんが、平行して遂に4000人近まできた新規感染者が発生する状況を見ながら、何とも複雑な思いです。今週末、来週は感染者数はどこまで行ってしまうのでしょうか、医療体制は大丈夫でしょうか。
それでは。