=(51)『BBC報道を黙殺する日本のメディア』以外にもいたるところに見て取れる損得マシン=
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こんにちは。柳原孝太郎です。
BBCが報じたジャニー喜多川氏の問題は、週刊文春が約20年前に報じているにもかかわらず、当方自身は今回のBBCの報道、およびそれを取り上げるネット/ユーチューブ報道を見るまで知らず、改めて日本の大手メディアの本件についての寡黙ぶりを再認識しています。
あるいは、20年前の当方自身が、もしかすると文春記事を目にしたかもしれないのにそれをスルーしてしまうような、そんな社会の空気感にどっぷりとつかっていたのか、そんなことも考えてしまいます。
『所属する界隈のポジション取り』
これは、以下のArcTimes(切り取り版)の最後で、宮台真司氏が述べるコメントです。
『ポジション取り』、あるいは『座席争い』は、宮台氏の言論の中に、「沈みかけた船の座席争い」、のような形でよく登場しますが、日本社会、日本人の空気感を表す表現として、日本の置かれた状況を当方自身が理解するのにとても役に立っています。
『自分が所属する界隈のポジション取り』と聞いて、ひとつ思い出したのは、MMT登場以降の経済学界隈の話です。当方は経済学者ではありませんから学問的にMMTと反MMTを論ずることはできませんが、当方のような素人でさえ少し考えれば、MMTが言う『自国建て通貨を発行する国が自国通貨建て国債の返済が滞って財政破綻することはない』、という事実を否定することができないことはすぐに理解できます。かといって、以下の中野剛志氏・森永康平氏のユーチューブ対談でも指摘されているように、MMTは、際限なく国債発行してよいとか、ハイパーインフレは起こらないとか、税金は必要ないとか、そんなことを言っているわけではないことも、同じようによく理解できます。
当方のような素人でも理解できることを、財政規律派の経済学者が否定するのを見ていると、ここにも『自分が所属する界隈のポジション取り』に必死になる損得マシンの姿がよく見て取れるように思えます。
おそらく財政規律派の経済学者・財務官僚の中でも、MMTが指摘する正しい側面に気が付いている人もいるに違いないのですが、それを認めることは、自らの所属する経済学界隈・財務省界隈で自分が何十年も主張してきた理論を否定する、つまり自分のポジションが根底から覆されることになるため、石にかじりついても認めようとしないのではないか、そう思えてなりません。
ジャニーズを扱えなくなることで巨大なエンタメ利権を失いたくない大手メディアの経営者と、MMTを認めることで経済学における自分の地位を失いたくない財政規律派の経済学者には、『今の自分のポジション』を失いたくない、ただその一点のために、何かもっと大事なものを失っているという共通点があるのではないか。そう思えてなりません。
自由主義経済の下で競争の自由を前提に生きているので、『今の自分のポジション』はもちろん誰にとっても大切とは思いますが、自分にとって大事なもの、人にとって大切なことは、『損得界隈での今の自分のポジション』以外にもあるのではないでしょうか。
宮台氏の言論の中に、『社会の外が消えた社会の中に閉ざされていると人はクズになる』というものがあります。社会の外に出ること、自分のポジションを降りてみること、自分が所属する界隈の外に出てみること、これらは人の人生、自分の人生において大事なものを見失わないようにするために、とても大切なことであるように感じています。自由主義経済の下では損得勘定は必要不可欠であることもまた否定できないのですが、損得勘定から自分が所属している界隈と、その外側とを行ったり来たりしながら、損得界隈に閉ざされて大切なものを見失わないようにしたい。最近のジャニーズ界隈と、財務省界隈を見ながら、そんなことを思っています。
それでは。
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1 thought on “『所属する界隈のポジション取り』をする人々”
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