=世界が『自分探し』で迷走した後にくっきり浮かび上がる『言論の自由』という対抗軸=
(38)目次 ・NATOとプーチンは何に対立してきたのか? ・冷戦終結後に目標を失い『自分探し』で迷走する世界 ・ソ連崩壊後、NATOを存続させた理由は何か? ・権威主義国家に対し自由主義陣営が絶対に守りたい『言論の自由』 ・習近平にプーチンを反面教師と思わせるために必要なこと
こんにちは。柳原孝太郎です。
ロシアのウクライナ侵略が益々激化しており、大変残念ながら、現在の情勢はほんの序の口で、これから本当に残虐な展開がされていくことが現実実を帯びていると言わざるを得ない状況を目の前に、何とも無力感を感じざるを得ません。なぜ、このような事態になってしまったのか。
本稿の最後で触れますが、ここまでくると、当方にはもはや世界大戦がはじまっているとしか思えず、正気ではないプーチンを止めるには、軍事で対抗するのは核戦争⇒人類の破滅の道しかないのでここに踏み込むわけにはいかない状況からは、ロシア国内を内部崩壊させてプーチンから権力を引きはがす以外にないように見えます。
そのためには、既に事実上の世界大戦がはじまっているとの認識を逃げずに受け止めた上で自国の出血を覚悟の上で、まだ手ぬるいとしか思えない経済制裁を全世界的に徹底的に実施するしかないと見えます。
中国の存在が西側陣営には目の上のたんこぶとなっていますが、中国がロシアに加担するのであれば中国にも徹底した経済制裁を加えることを覚悟して実施しないと、西側世界から見ると核兵器を持ったサダムフセインあるいはオサマ・ビン・ラディンと同じカテゴリーになっているプーチンを止めることはできないように見えます。
そんな、中国に経済制裁など加えるのは現実的ではない、というのは、それこそ今起こっている事実を現実的に捉えていないとしか思えません。既に世界大戦の火ぶたは切られている。ロシアに加担するなら中国に対しても経済制裁は徹底しなければならない、たとえ自国が出血しても。そう思われます。
今現在実際に起こっている現実に対しては、プーチンから権力を剥ぎ取ることに全世界が集中するしかない様に見えますが、一方でそんな現実を見ながら、世界情勢の細部までは良く知らない馬の骨の当方として、そもそも、なぜこんな事態に至ってしまったのか、という部分に対して、非常にもやもやした疑問がぬぐえていませんでした。
NATOとプーチンは何に対立して来たのか?
そのもやもやした疑問は、ソ連が崩壊して冷戦が終わったはずなのに、NATOはなぜ存続してきたのだろう?ロシアを仮想敵国としているのであれば、NATOはロシアの何に敵対せねばならなかったのだろう?という疑問です。
そんな中で、ジャーナリスト・神保哲生氏のメディアvideonews.comで、元国連職員で世界の紛争地域で紛争解決に携わってきた、現東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏との対談、題して「NATOの「自分探し」とロシアのウクライナ軍事進攻との関係」を見ました。
また、毎日新聞にも伊勢崎氏のインタビュー記事が出ています。
毎日新聞 2022/3/5 14:00(最終更新 3/6 00:31 「プーチン悪玉論」で済ませていいのか 伊勢崎賢治さんの知見 https://mainichi.jp/articles/20220304/k00/00m/040/254000c
これらを見ると、NATOは冷戦が終わったのになぜ存続してきたのだろうという部分に対して、伊勢崎氏がこれまでの状況を説明してくれています。伊勢崎氏の発言から当方理解できたのは、NATOは「自分探し」していた、つまり、存続させなくてよいものを、存続させるために、「敵を探していた」ということで、その敵がロシアだった、ということになります。
ただ、今現在、実際にプーチン政権がウクライナに軍事進攻した事実を見るかぎり、結果的にNATOの存在意義は肯定され、自らの妄想のために他国を軍事進攻する専制国家に対峙するために、ヨーロッパには欠かせない存在と言わざるを得ません。ただ、ここに至る経緯は、伊勢崎氏も「侵略者のロシアを贔屓するのかとバッシングを受けるリスクがあることを認識しながら発言」しているとおり、NATOと西側のこれまでの動きかたも、改めて検証しなければならない様に見えます。
冷戦終結後に目標を失い『自分探し』で迷走する世界
元KGBのプーチンがソ連崩壊で自国が無くなるのを目の当たりにし、その後どの様な経緯で現在にいたるのかは、各種報道で確認することができますが、ソ連崩壊で目標を失ったプーチンが自分探しで至った結論は、結局、旧ソ連(的な大帝国)の復活、という妄想でした。ソ連崩壊時の密約と言われる、NATOは1インチたりとも東方拡大しない、という約束をNATOが破ったことが今回の軍事作戦(ロシア側の言い方)の理由だとしているものの、ソ連が崩壊した後は、分裂した各国家、NATO加盟したバルト3国もウクライナも、国際社会で主権国家と認められており、自らの国防政策は自国で決める権利が当然あります。
NATOに加盟するしないは、各国家が何が自国にとって得策であるのかを検討した結果です。もちろんNATOの戦略的な動き方がそれら国家をNATOに引き寄せた背景はあるでしょうが、結局自国で望まない限り、NATOへの加盟はできません。
隣国の主権国家としての権利行使を認めないというプーチンの考え方は、結局、旧ソ連的な大帝国を復活したいという、妄想に基づいたものでしかありません。国際社会として受け入れられるものではありません。
一方のNATOはどうでしょうか?ソ連が崩壊して冷戦が終わった後、伊勢崎氏の主張によると、自分探し、つまり、仮想敵国を探していたということになります。その間、米国の9.11同時多発テロを契機とするテロとの戦い、NATOとしてのアフガニスタン侵攻と失敗の経緯に平行して起こっていたのが、ロシアのクリミア併合の動きです。テロとの戦いが迷走していたNATOとして、ロシアのクリミアへ移行は明確な目標の再設定、結果的な存在意義の主張に役立っていたものと思われます。
ただ、それらの動き全体を俯瞰してみたとき、結局、NATOとして冷戦終結を契機に本来為されるべきロシアを含めた欧州の平和構築という動き方にはならず、結果的に、敵国を作り出して軍事力を強化、拡大(結果的に東側に)をしているのは、NATOとしての組織の存属自体が目的化していたのではないか、という疑問も出てきます。真に平和を望むのであれば、旧ソ連所属の中小国をNATOに取り込んで軍基地を置くというやり方ではなく、ロシアと地域の平和維持に向けた動き方を模索する動き方をしてきたはずです。
ソ連崩壊後、NATOを存続させた理由は何か?
そうならない理由のひとつとして、やはり軍産複合体の存在があるのではないか、という点が当方はひっかかります。
国民の恐怖はカネになる…ハリウッドが警告し続ける軍産複合体の冷血 アバター、アイアンマンからローガンまで 遠藤 徹 プロフィール 2017.07.16 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52255?page=2
軍産複合体は米国だけの問題ではなく、ロシア側にも、また中国でも同様の仕組みがあると言えますが、結局、現在のロシアのウクライナ侵略によって世界を不安のどん底に落としている中で、唯一、ほくそ笑んでいる集団が存在します。そう、軍需産業、軍産複合体の存在です。戦火が拡大すればするほど、軍需が増大して利益を拡大させ続ける集団です。
プーチンが一線を越えたため、過去の経緯の検証は横において、侵略を実施した悪をまず排除したい世界世論の中では、軍産複合体に否定的な言論はとても出しにくい状況です。
ただ、各国で軍産複合体が政治と密接に絡み影響力を持つ状態が続くかぎり、平和的な動きには軍産複合体が政治に影響を与えて一定の歯止めをかけてしまうのではないか、そんな疑心暗鬼がぬぐえない状況でもあります。
権威主義国家に対し自由主義陣営が絶対に守りたい『言論の自由』
過去の経緯は横において、現在のロシアのウクライナ侵略は一刻も早く止める方法を全世界で追求せねばなりません。核戦争を起こさない方向性で最大限にできることは、未だ制裁されずに残っているロシアのエネルギー利権につながる西側利益も出血覚悟で一切合切止める、徹底的な経済制裁を実施することです。
ただ、中国の存在が自由主義陣営にとっては大きな影を落としています。ロシアの非道な侵略に対して、敵の敵は味方の論理で中国がロシアに味方をするとすれば、プーチン政権の延命を助長するしかなく、ウクライナ国民の犠牲をできるだけ増やさないためには、それは何とかして阻止せねばなりません。
過去の経緯、自由主義陣営のかかる問題点、軍産複合体の存在(これは権威主義国家側の問題でもありますが)は、今後も国際社会の中で議論されていかねばならない問題ですが、一方で目の前のウクライナ国民の生命とウクライナの国土・主権を守るためには、中国であろうがどこの国であろうがロシアに加担する国には、自由主義陣営は徹底的に対抗する、具体的には徹底的な経済制裁を実施せねばならないように思えます。
その結果、自由主義陣営も自らのかなりの出血は覚悟せねばなりませんが、上述したように、今回プーチンが一線を越えたことによって、実質的には世界大戦が既に始まっているとの認識に立った、かなり踏み込んだ覚悟が必要なところまで既に来ているように見えます。
自由主義陣営が改めて明確に自覚せねばならないのは、プーチンの動きに習近平が乗って動き出す可能性です。元々冷戦時代を通して中国とロシアは敵対関係にありましたが、現在の国際情勢では、敵の敵は味方の図式でお互いに利用価値のある相手同士になっています。現在のロシアの動きに対する中国の姿勢は様々な見方から報道がされていますが、ロシアの動きを支援する動き、あるいはロシアの動きを利用した新たなアクションは、ことごとく防いでいかねばなりません。
とても恐ろしいと思えるのは、プーチンと習近平の共通性です。言論の自由を始めとする国民の人権は、自らの権力基盤・特権階級が権力を維持する為には一切許さない権威主義を背景に、プーチンも習近平も、みずから終身の国家元首であり続けることを狙っています。
終身の国家元首? それを聞いた段階で、普通は笑止千万と思われるはずのものを、本気でそれぞれの国のトップが目指しているということが、現実として起こっている。その国に住んでいる国の国民はなぜそんな権力者個人の横暴がまかり通る社会、国家体制に安住しているのだろう、と思ってしまいます。いや、実際には国民が許しているのではなく、国民は反論したいと思っていても、絶大な国家権力によって、そういう言論を一切封印されている。一切の言論の自由が認められない国家体制が維持され、その国の国民は権力に押さえつけられっている、あるいは、文句を言わないような洗脳教育を受けている。
冷戦終了後、NATOなり自由主義陣営は何と戦っていたのか?という点を上述しましたが、結局、今あらためて明確に言えるのは、自由主義陣営が、ロシア・中国などの権威主義国家と対立している点は、『言論の自由』を絶対に守る、という点です。
プーチンと彼の権力に群がって利用しあっているオリガルヒと言われる一部新興財閥・特権階級たちに権力が集中しすぎてしまった結果、ウクライナが主権国家であることを否定する妄想に陥ったプーチンの暴走を誰も止めることができませんでした。一方の習近平も、置かれた環境は、プーチンにそっくりです。国内を共産党の絶対的な権力で言論封殺して、国民を洗脳して支配しており、プーチンと同様、自らを終身の国家元首として祭り上げようとしているのは、とても正気とは思えません。プーチンが妄想にはまった様に、習近平も国際世論は無視して、暴走する可能性は、誰も否定できません。
ロシアも中国も、核兵器をもつ、国際連合の常任理事国です。信じがたい事実として、国際社会に模範を示すべき常任理事国のトップが、国民の言論を封殺して、終身の国家元首になろうとしている。中世のローマ帝国の皇帝でもあるまいに、正気なのかとつくづく暗澹たる気持ちになります。
今回のロシアのウクライナ侵略を契機に、実態としてはロシア・中国が、国家元首とその取り巻きの利権だけのために、自国内のみならず、世界中で言論封殺をする戦いを始めたと見るべきと思えます。
自由主義陣営は、世界大戦がはじまっているとの覚悟を持って、『言論の自由』を守る戦いを始めなければならないと強く思います。
習近平にプーチンを反面教師と思わせるために必要なこと
それでは言論の自由を守るために、具体的に何ができるでしょうか?
核戦争を回避する前提では、現状、自由主義陣営ができることは経済制裁しかありませんが、もし中国がロシアをバックアップする動きをするのであれば、中国を含めて経済制裁を徹底的に加えなければならないと思えます。
現在、中国は敵の敵は味方の論理で、ロシアのウクライナ侵略を利用する方向で色々情勢分析をしているものと思いますが、一方で、ロシアに対する世界の団結が思った以上に強いことを予想外として慎重になっている節があります。
今回のロシアの動きとは究極的にはまったく別のカテゴリーで、中国の・習近平の世界での覇権確立の野望は続いていくものと思います。今回のロシアのウクライナ侵略は、中国に自らの野望の実現へのアクションを容易にする機会になる一方、自由主義陣営としてのチャンスと言えるのは、ここで徹底的にプーチンを権力から追い落とすことができれば、中国への、習近平への強烈なメッセージにもなりうる、ということです。
具体的には、ロシアを完膚なきまでに、世界経済から切り離して孤立させることで、ロシア国内でプーチンの権力を剥ぎ取ることをまず早期に実現させることです。
ただ、ロシアにそれができたとしても、中国とロシアでは、国力・経済力・軍事力が段違いで、中国に対してそれと同じようなことはとてもではできない、という話が出てくると思います。
普通に考えるとその通りと思いますが、ただ、そういう発言をする人の前提は、第三国にいる自らの生活・経済には極力影響を出さないように穏便にすませることができるのではないか、すませたい、という発想があるように見えます。
ただ、言論の自由が、経済的な利益を犠牲にしてでも絶対に守りたいと思うのであれば、既に権威主義国家と自由主義陣営の世界大戦がはじまったと考えて、戦時体制としての出血覚悟で行動を始めた方が良いと思えると言うことです。
その前提は、我々自由主義陣営は、絶対に、『言論の自由』は放棄しないということです。
言論の自由よりも、経済優先だ、損得勘定が先だ、という人、集団は自由主義陣営にもとても多く存在すると思います。現に、日本でも、米国でさえ、中国の政治的な動きには賛同しないものの、自国の経済の維持・発展を考えて中国との経済関係は維持する具体的な動きが経済界では維持されています。
ただ、今回のロシアのウクライナ侵略で、完全に世界史のページがめくられたと考えるべきと思われます。プーチンのような言論封殺を前提とした権威主義的な妄動をすると自らは世界から孤立して破滅する、というシナリオを見せられるか否かで、中国の動き方も変わってくると思われます。
習近平に、世界から孤立する動きかたはやはりやめよう、と思わせるほど、徹底的にロシア、およびロシアを助ける中国に対する経済制裁を実施せねばなりません。それができないと、我々が大事に思っている言論の自由が保障された世界が、我々が思っているよりもずっと早く、ずっと簡単に、中国の覇権主義に飲み込まれて破綻してしまう、そんな危険を感じています。
習近平に、プーチンの様にはなりたくない、そんな思いをさせるためには、既に世界大戦が実質的に始まっているという認識での出血覚悟の毅然とした経済制裁での対応が求められているように思います。
それでは。
1 thought on “冷戦後のNATOとプーチンの対立点は何か?”
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